先日、保険会社から「令和4年より、火災保険の保険料が上がります」との話がありました。
昨今の気候変動に伴う自然災害の増加などにより、損害保険各社としては値上げせざるを得ない状況になってしまったのかなと感じます。

〇火災保険料

令和4年から値上がりしていくといわれている火災保険料ですが(値上げするタイミングは損害保険各社で違ってくると思われます)、火災保険料は一体どのように決まるのでしょうか?
火災保険料は、保険金等の支払いに使われる「純保険料」と保険会社の経費と利益になる「付加保険料」の2つで成り立っています。

・「純保険料」・・・火災などの被害が発生した時に受取人に支払う保険金の原資
・「付加保険料」・・・保険会社が事業を運恵右する為に必要な経費や保険代理店に支払う手数料、保険会社の利益などから構成されます。

また、一般的に保険金の原資である純保険料は、事故の発生頻度や損害額など、過去のデータに基づいて「純保険料率」を基に決まります。
この、「純保険料率」を算出するのに使用されるのが、損害保険料率算出機構が算出した「参考純率」です。

《参考純率》
参考純率は、各保険会社から提供された大量の支払いの実績データを用いて「損害保険料率算出機構」が算出します。
ただし、自然災害に関しては、過去の大規模なデータから将来の自然災害による損害額を予想することは難しく、過去のデータだけでなくシミュレーションも利用し算出します。(参考純率は使用義務のない参考数値なので、この数値を用いずに保険会社独自に純保険料率を算出することも可能)

〇火災保険料が値上げされる要因

火災保険料は、保障内容や建物の構造、居住場所など、様々な要素で保険料が変わります。
今回の保険料値上がりの背景の、大きな要因の一つは、上記で紹介した「純保険料率」(参考純率)が改訂されたことです。
改定の大きな原因は
1 住宅の老朽化
2自然リスクの増加
となります。

・住宅の老朽化
そもそも、築年数の古い住宅は、新築など築年数の浅い住宅に比べ、電気・給排水設備などの老朽化による影響で、火災・水濡れリスクや台風・大雪などにより損壊するリスクが高くなります。

住宅老朽化・保険相談
近年では、築年数の古い住宅の割合が増加傾向にあり、今後も増加していくことを想定し、参考純率に反映することで保険料の引上げに繋がりました。

・自然リスクの増加
火災保険の保障内容に、台風や豪雨によって損害が生じる、風水災があります。近年、この風水災による被害が増加傾向にあります。

台風豪雨災害・保険見直し
風水災の被害の増加に比例して、損害保険会社の支払保険金が増加した為、火災保険料の引上げが必要な状況となってしまいました。
参考までに、2017年度から2020年度までの風水災による損害保険会社の支払保険金を紹介しておきます。

年度 主な風水災 支払保険金
2017年度 平成29年台風18号
平成29年台風21号
300億円
1,078億円
2018年度 平成30年7月豪雨(西日本豪雨)
平成30年台風21号
平成30年台風24号
1,520億円
9,202億円
2,856億円
2019年度 令和元年台風15号(令和元年房総半島台風)
令和元年台風19号(令和元年東日本台風)
令和元年10月25日大雨
4,244億円
4,751億円
155億円
2020年度 令和2年7月豪雨
令和2年台風10号
848億円
932億円

一般社団法人日本損害保険会社協会 近年の風水害等による支払保険金調査結果参照

また、この自然災害リスクの増加により、火災保険の保険期間にも大きな改定がありました。
自然災害のリスクが、将来的にも大きく変化していくことを見込むと長期的なリスク評価が難しくなります。
これに対応する為、保険期間が現行、最長10年のところ、5年へと変更になります。
つまりは、これから先の自然災害リスクの損害が増加する可能性を想定すると保険期間10年では、適正な保険料にする為には、保険期間が長すぎるという判断だと思われます。

〇まとめ

近年でも、記憶に残る豪雨や、台風などの自然災害が多いなと感じていました。
損害保険会社としても、火災保険料の値上げは致し方ないのかなと思います。
保険料見直し・ファイナンシャルプランナー
ですが、私としては一番ビックリしたのが、保険期間が最長5年へと変更になることです。
実は、火災保険料は保険期間に合わせて割引があります。
昔の火災保険は、保険期間35年といった火災保険がありましたが、現在では最長が10年となってしまい、割引率も下がってしまっています。
来年からは、保険期間が短くなることでさらに割引率も下がってしまうでしょう。
令和4年からは、火災保険料の値上げ、最長保険期間の短縮など、私達からすれば、あまり嬉しくない出来事が待っています。
ですが、これらがスタートするのは令和4年からです。
ということは、令和3年である今年はまだ改定前なので現行の保険料・保険期間で火災保険を掛けることができるのです。
現在、加入している火災保険があれば、新しい火災保険に掛け直すことで、最長10年間を、値上がりする前の火災保険料で掛けることができるのです。
保険料が値上がりするのに抵抗がある方は、一度プロの保険屋さんに相談してみてはどうでしょうか。


 

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